研究内容

遺伝情報に基づいた個別化治療の開発

 てんかんは人口の約0.6%(患者推定数:72万人)が罹患する最も頻度の高い神経疾患ですが、発作抑制率は75%にすぎません。外科的治療技術の発展が著しい現在においても、てんかんにおける主たる治療方法は抗てんかん薬 (AED)による対症療法です。しかしながら、発作抑制に至るまでのAEDの決定及び投与量の設定には、Try and Errorを繰り返し、発作抑制率も75%に過ぎません。近年、一部の家族性てんかんにおいて、責任遺伝子とその分子病態が明らかになり、より頻度の高い弧発性てんかんにおいても、責任遺伝子探索が開始されています。また、AEDの作用機序及びAED代謝関連遺伝子の多型も明らかになっており、近い将来、これらの知見から遺伝子診断を行い、遺伝子型から個々の患者に合った最適なAED及び投与量を設定する「てんかんの個別化治療」が実現すると考えられます。てんかん・熱性けいれん遺伝子解析グループでは、遺伝情報に基づいたてんかんの個別化治療の実用化を目指し、てんかんの責任遺伝子探索、AEDの作用機序の解明、AED代謝に関与する薬物代謝酵素CYP・薬物排出トランスポータ多型との代謝能との薬理遺伝学的解析といった多方面からのアプローチから研究を展開しています(図1)。将来、てんかんの個別化治療の実現により予後予測や最適なAED選択を行え、また異なるてんかん類型に移行し得る場合には早期介入により重篤な類型を回避、一部てんかん類型では根治療法も可能となる時代が来ることが期待されます。


 
          図1. 遺伝情報に基づくてんかんの個別化治療開発の概要


【研究プロジェクト】

 ○てんかんにおける責任遺伝子の網羅的探索(弘前大学・福岡大学・理化学研究所)
  〜高密度DNAマイクロアレイを用いたてんかん原因遺伝子変異ゲノム全域スクリーニング
  〜次世代シーケンサーを用いたてんかん原因遺伝子変異ゲノム全域スクリーニング

 ○モデル動物を用いたてんかん分子病態解析(弘前大学・福岡大学・三重大学・理化学研究所)
  〜ヒトてんかん責任遺伝子を導入したてんかんモデル動物の開発

  〜てんかんモデル動物を用いた根治療法の開発

 ○新規AEDの作用機序の解明(弘前大学)

 ○薬物代謝酵素・薬物排出トランスポータ・イオンチャネル遺伝子多型に基づいた薬物投与設計(熊本大学・弘前大学)

  〜薬理遺伝学的根拠に基づいた抗てんかん薬の個別化薬物療法
  〜遺伝的多型を組み込んだ母集団薬物動態解析